血液製剤について

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

関連疾患

感染症など

選択的IgGサブクラス欠損症
  注:感染症としての疾患名ではない。

【効能・効果】

人免疫グロブリンはIgG、IgM、IgE、IgA、IgDの5つのクラスに分類されます。IgGには4つのサブクラスが存在し、その割合はIgG1:65~70%、IgG2:20~30%、IgG3:4~8%、IgG4:2~6%です。選択的IgGサブクラス欠損症とは、そのうち1つないし、いくつかのサブクラスの欠損ならびに低下を示し、感染症を繰り返す病気です。IgAの低値を伴うものもあります。 乳児において母体から移行したIgGは、生後4~6か月頃に最低値となりますが、その後、徐々に自身で産生できるようになり増加し、4~6歳で成人のほぼ2/3に達することが知られています。それぞれのサブクラスも同様ですが、特にIgG2とIgG4は遅れて増加する傾向にあります。IgG2には、莢膜(きょうまく)*1 に対する抗体が含まれており、IgG2が産生されなかったり、産生が遅れたりする場合、莢膜をもつ肺炎球菌、インフルエンザ菌等による感染症(中耳炎等)を繰り返しやすくなります。

【図-1:IgG2の莢膜】

【図-1:IgG2の莢膜】


【症状】

易感染性(いかんせんせい)*2 を示しますが、なかには無症状の場合もあります。IgG2欠損症では肺炎球菌、インフルエンザ菌等による中耳炎や気管支炎、肺炎を繰り返すことがあります。

【検査】

血液中のIgGサブクラスをネフェロメトリー法(微粒子が浮遊する懸濁液に光を当て濁り度合を測定する)で測定します(IgG2, IgG4検査は保険収載) 。

【治療】

感染症に対する抗菌薬の治療が中心となりますが、血液中のIgG2の値が低く、感染症(中耳炎等)を繰り返す場合は、免疫グロブリン補充療法を行います。

【免疫グロブリン補充療法】

初回は体重1kgあたり300mg(6mL)、2回目以降は体重1kgあたり200mg(4mL)を4週間間隔で6回を目安に点滴静脈注射します。

【図-2:免疫グロブリン製剤の使い方】

【図-2:免疫グロブリン製剤の使い方】


*1莢膜(きょうまく、capsule):一部の細菌がもつ細胞壁の外側にある膜で、多糖類から構成されていることから莢膜多糖体と呼ばれます。莢膜は白血球、マクロファージなどからの貪食から逃れやすくなるため、また菌体表面への補体の結合を抑制することで、補体による殺菌を回避することが知られています。

*2易感染性(いかんせんせい):免疫機能の低下などにより抵抗力が弱まり、細菌、ウイルスなどによる感染症に罹りやすくなっている状態です。


その他、用語については「血漿分画製剤のいろいろ」の「免疫グロブリン製剤」をご参照下さい。

<東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野教授 森尾 友宏先生(2016年6月監修)>

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