血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

アンチトロンビン製剤

アンチトロンビン(アンチトロンビンⅢ)について

アンチトロンビンは血液中にあるタンパク質で、血が固まる(凝固)のを抑える働きがあります。アンチトロンビン(antithrombin)のアンチ(anti)は、アンチ巨人(反巨人)やアンチ・エイジング(抗加齢)と同じアンチで、「反対する」または「抵抗する」といった意味があります。トロンビンは、血を固まらせる一群のタンパク質である凝固因子の一つのプロトロンビンが活性化されたものです。アンチトロンビンは「抗凝固因子」または「凝固制御因子」などと呼ばれる凝固を抑制する因子の一つです。仮にアンチトロンビンが血液中になかったとすると、血液は体の血管の中で固まり、血管が詰まります。この状態がアンチトロンビン欠乏症による血栓症(けっせんしょう)です。血栓症になり治療が行われないと、その先の組織に血液を介した酸素や栄養が届かず、組織の壊死(えし)が起こり、場合によっては死につながります。

血液凝固を抑えるアンチトロンビン

アンチトロンビンⅢは、アンチトロンビンの古い呼び名で、両者は全く同じものです。アンチトロンビンⅢの「Ⅲ」は、このタンパク質が発見される過程で名付けられたものです。血中のトロンビンの効果を打ち消す因子群が6種類ありそうだということで、アンチトロンビンⅠ~Ⅵとローマ数字を付けて分類されました。しかし1966年に実際は、これら6種類のアンチトロンビンのうちアンチトロンビンⅢだけが、トロンビンの作用を抑制する本体である、と結論づけられました。その後、アンチトロンビンⅢという名称が長い間使われてきましたが、1994年に国際血栓止血学会でアンチトロンビンⅢを単にアンチトロンビンと呼ぶように決定されました。それ以来、血漿由来の製剤名を示す場合以外、単に「アンチトロンビン」と呼ぶことになっています。

<新潟県立加茂病院名誉院長 高橋 芳右先生(2024年5月監修)>

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