血漿分画製剤のいろいろ

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血漿分画製剤のいろいろ

アンチトロンビン製剤

アンチトロンビン製剤の開発

1950~60年代、血液中の抗凝固物質、アンチトロンビンの存在が明らかになり、その欠乏が血栓症と深く関わっていることも見出されました。一方、1940年代、アメリカで人の血漿をアルコールで処理することで工業的に血漿タンパク質を製剤化する技術も開発されました。最初にアルブミンが、次に免疫グロブリンが製剤化され、その後も医療に有用な血漿中のタンパク質を製剤化する研究が企業によって進められていました。アンチトロンビンは、1960年代の学問的研究成果を基礎として、1970年代中頃に製剤化研究が始まりました。製造的には、血漿をエタノール処理したアンチトロンビンを多く含む画分を用い、これをさらにクロマトグラフィーや硫酸アンモニウムなどで精製度を上げ、ウイルス不活化のための加熱処理をすることで、製剤化されました。

製造工程の概略

血漿由来のアンチトロンビンⅢ製剤は、1970年代から1980年代初めにかけてアンチトロンビンが減少して血栓症を起こしている人に対して、臨床試験が実施され、ドイツでは1981年、日本では1987年に承認されています。


【アンチトロビン製剤ミニ開発史】

 
年代 出来事
1800年代初期 英外科医ハンター、血栓による組織壊死を報告
1800年代後期 独病理学者ウィルヒョウ、血栓形成の3要因を提起
1940年代前半 米ハーバード大コーン、アルコールによる血漿分画法を開発
1950年代初期 血漿中に抗凝固タンパク質アンチトロンビンが見つかる
1965年 ノルウェーで静脈系血栓症の一家系が見つかり、先天性アンチトロンビン欠乏によるものと判明
1970年代 血漿からのアンチトロンビンの製剤化研究が始まる
1981年 ドイツでアンチトロンビンⅢ製剤が承認される
1987年 日本でアンチトロンビンⅢ製剤が承認される
2009年 アメリカFDAがトランスジェニック山羊の乳からのアンチトロンビン製剤を承認
2015年 日本で遺伝子組換えアンチトロンビン製剤であるアンチトロンビンガンマが承認される

<新潟県立加茂病院名誉院長 高橋 芳右先生(2024年5月監修)>

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