血液製剤について

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血液製剤について

血漿分画製剤

血漿分画製剤の安全性

医薬品は、「期待される効果」と「副作用等のリスク」を併せ持つものです。 血漿分画製剤は、人の血液から赤血球などの血球成分を取り除いた血漿から、必要な成分のみを精製し、純度と濃度を高め製剤化しています。そのため、効き目良く使用することができ、しかも生体からの拒絶反応はほとんどありません。さらに、これら血漿分画製剤は感染症、熱傷、出血、免疫異常遺伝性凝固異常症など、他に代替品のない重篤な病状の方に使用されるケースが多く、貴重な医薬品といえます。

しかし、人の血液を原料としているため、ウイルス等の感染の危険性を、完全には否定できません。現在では、この様に有用な血漿分画製剤が安心して使用していただけるよう、採血(採漿)から製造工程・出荷の各段階において、安全性を確保するための対策(原料血漿の感染症に関する検査、製造工程中の不活化・除去技術の導入等)が実施されており、これらの対策により血漿分画製剤の安全性は向上しています。

さらに科学技術の進歩とともに安全性を高めるための努力が積み重ねられています。

安全性確保の具体的な方策

血漿分画製剤が医療の現場に届くまでには、原料となる血漿を得る段階から製品として出荷されるまで、大きく分けて5つの厳しい「安全性を確保するための関門」が設けられています。

その5つの関門について、図を参考にしながら説明いたします。

安全確保の為の5つの関門

採血時の問診・診察 原料血漿の感染症に関する検査 原料血漿の貯蓄保管 製造工程でのウィルス不活化・除去 最終製品の検査

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1)採血時の問診・診察

まず一番目の関門として、「採血時の問診・診察」があります。献血をされた経験のある方はご存じのことと思いますが、原料となる血漿を採取する段階で、供血者の健康状態等についての問診・診察が行われます。そして、問題ないと判断された方の血漿のみが、血漿分画製剤の製造に使用される原料の候補となり、次の段階に進みます。

2)原料血漿の感染症に関する検査

二番目の関門としては、感染症に関する検査があげられます。まず、エイズ原因ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)について、抗原または抗体の検査(血清学的検査)が実施されます。

これらのウイルスに感染している供血者の血漿はほとんど、この血清学的検査で排除することができます。

しかし、これらのウイルスには「ウインドウ期」と呼ばれる、感染してから数週間ないし数カ月の間、検査で見つけられない時期があります。この様な状態(ウインドウ期)にある供血者は、人数としては極めて少ないのですが、先の「問診・診察」や「血清学的検査」では見逃す危険性があります。

これを解決するための方策として、最近ではウイルスの遺伝子の断片(かけら)を検出する極めて高感度な検査方法である「核酸増幅法(NAT検査)」が、HIV、HBV、HCVについて実施されています。

このNAT検査が実施されるようになり、ウインドウ期を大幅に短縮することが出来るようになりました。

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3)原料血漿の貯留保管

三番目の関門である「原料血漿の貯留保管(Inventory Hold)」も、近年実施が始められた安全性確保対策の一つです。これは採血後のいろいろな情報を生かして、原料として不適格な血漿を排除するための方策です。

先の2つの関門をクリアー(合格)した血漿は、一定期間倉庫に貯留保管されます。この間に供血者にウイルス感染等の疑いが出た場合、その人から採取された血漿は他の血漿から隔離されます。

このような原料段階でのチェックをクリアーした血漿だけが、次の製造工程に進みます。

4)製造工程でのウイルス不活化・除去

製造工程では、いくつもの有効タンパク質(例えばアルブミン)成分を含む原料血漿から、高度な精製技術を用いて、それぞれのタンパク質成分の純度を高めて取り出します。

ここでは第四番目の関門として、万が一ウイルス等が混入した場合でも、そのウイルス等を不活化又は除去できるような工程[エタノール処理、加熱処理SD(有機溶剤/界面活性剤)処理ウイルス除去膜処理など]が2つ以上組み込まれています。

この様に製造工程では、高度な精製が行なわれるとともに、「ウイルス不活化・除去処理」が施され、最終製品となります。

5)最終製品の検査

第五番目の関門は、できあがった製品に対し、出荷前の最終段階で実施される各種検査(無菌試験、発熱試験、異常毒性否定試験等)です。この検査をクリアー(合格)した製品だけが出荷され、医療機関で患者さんに使用されます。

以上、血漿分画製剤の安全性確保の現状について説明いたしましたが、これからも、さらに安全性を高めるためのたゆまない努力が続けられていきます。

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