血液製剤について

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血液製剤について

血漿分画製剤

血漿分画製剤の歴史

全血輸血から成分輸血そして血漿分画製剤へ

1900年、ランドスタイナーのABO式血液型の発見により、近代的な輸血が始まりました。その後、1936年には初めて、血液をその成分である血球と血漿に分けて投与する成分輸血もアメリカで行われました。

その血漿は1939年、凍結乾燥製剤化されたことで、保存期間の延長などにより利便性が増し、急速に普及しました。その後ほどなくして、この血漿中の種々の働きを持つ、様々なタンパク質を分離・精製して製剤とする血漿分画製剤が開発されていきました。

1941年、低温エタノール分画法と呼ばれる血漿タンパク質の連続的分離法が、ハーバード大学のコーン教授により開発されました。これは低温下の血漿に エタノールを段階的に濃度を変えて加えることで、グロブリン、アルブミンなどの血漿タンパク質を次々に分離させてゆく工業的な方法です。コーンの低温エタノール分画法は、現在も世界のほとんどの血漿分画製剤メーカーによって採用されています。

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血漿分画製剤のあゆみ

(製造・輸入許可の歴史)

※赤字は海外、青文字は国内。

1900

1918
1919
1933
1936
1941
1942
1943
1954
1962
1963
1964
1967
1969
1970
1975
1976
1978
1979
1980
1983
1985

1987
1988
1990
2000
2006
2010
2013
2014


2015



2017
2018
2024
◆血液型の発見
 (オーストリアのE・Kランドスタイナー医師)
◆保存血液による初の輸血(アメリカ)

◆日本で初の輸血(九州大学)
◆凍結乾燥製剤
◆世界初の血液成分輸血
◆コーン教授によるエタノール血漿分画法開発
◆アルブミン製剤・市販開始(アメリカ)
◆免疫グロブリン製剤・市販開始(アメリカ)

◆免疫グロブリン製剤(筋注用)
◆加熱人血漿蛋白製剤(アルブミン)
◆血清アルブミン製剤
◆フィブリノゲン製剤
◆特殊(抗破傷風)免疫グロブリン製剤
◆クリオ(AHF)製剤
◆ペプシン処理免疫グロブリン製剤(静注用)
◆プラスミン処理免疫グロブリン製剤(静注用)
◆第Ⅸ因子複合体(濃縮)製剤
◆第Ⅷ因子濃縮製剤
◆完全分子型免疫グロブリン製剤(静注用)
◆第XIII因子製剤
◆特殊(抗HBs)免疫グロブリン製剤
◆加熱第Ⅷ因子製剤・加熱第Ⅸ因子製剤
◆ハプトグロビン製剤
◆アンチトロンビンⅢ製剤
◆組織接着剤フィブリン糊製剤
◆C1インアクチベーター製剤
◆活性化プロテインC製剤
◆組換え第Ⅷ因子製剤
◆組換え第Ⅸ因子製剤
◆10%免疫グロブリン製剤(静注用)
◆組換え半減期延長型第Ⅸ因子製剤
◆第X因子加活性化第Ⅶ因子製剤
◆20%免疫グロブリン製剤(皮下注用)
◆組換え第XIII因子製剤
◆組換え活性型第Ⅶ因子製剤
◆組換え半減期延長型第Ⅷ因子製剤
◆組換えアンチトロンビン製剤
◆プロトロンビン複合体製剤
◆二重特異性モノクローナル抗体(第Ⅷ因子機能代替製剤)
◆乾燥濃縮人プロテインC製剤

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日本における血漿分画製剤の展開

日本で輸血が盛んになったのは、第二次世界大戦後の昭和20年(1945)以降のことと考えられます。このような状況下、昭和30年(1955)前後から昭和40年(1965)にかけて、日本で最初の血漿分画製剤である免疫グロブリン製剤と、次にアルブミン製剤が市販されました。しかしながら、日本ではこれらの製剤は、当初しばらくの間、十分活用されない時代が続きました。

そして、昭和50年(1975)代になり、医療の高度化を背景として、血漿分画製剤が次第に普及するようになりました。製剤としては、アルブミン製剤が汎用されだした事に加え、静脈注射可能な酵素(ペプシンやプラスミン)処理の免疫グロブリン製剤が、昭和47年(1972)から51年(1976)にかけて市販されました。それまでの筋注用グロブリン製剤が輸注時に痛みを伴い、また輸注する量に限界があったのに対し、これらの静注用グロブリン製剤ではそのような制約がなくなったために、有用性が高まり、医療に大きく貢献するようになりました。

さらに昭和50年代の半ば頃(1980年頃)、完全分子型静注用グロブリン製剤が相次いで市販されました。それまでの酵素処理により免疫グロブリン分子の一部(Fc部分)が除去された不完全分子型静注用グロブリン製剤に比し、完全分子型の静注用グロブリン製剤は、多くの利点を有しており、医療面での価値がさらに高まりました。

アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤と並ぶもう一群の製剤が凝固因子製剤です。これには主に、血友病Aの患者さんに使われる第Ⅷ因子濃縮製剤と、血友病Bの患者さん用の第Ⅸ因子(複合体)製剤があります。日本では第Ⅸ因子(複合体)製剤が昭和47年(1972)、第Ⅷ因子濃縮製剤が昭和54年(1979)に市販されています。こうした製剤の補充療法により血友病患者さんの生活の質は著しく改善しました。

しかしながら、第Ⅷ因子濃縮製剤、第Ⅸ因子(複合体)製剤では、それ以前の全血輸血やクリオ製剤と同じく、輸血後肝炎等のウイルス感染の問題が残っていました。けれども昭和60年(1985)、加熱第Ⅷ因子製剤と加熱第Ⅸ因子製剤が市販されるに至り、この様な問題の多くが解消されました。その後も、これら凝固因子製剤は、他の分画製剤と同様に、製造段階における精製度の向上やウイルス不活化・除去工程(S/D処理ウイルス除去膜など)の強化・導入を通じて、安全性の向上が図られています。

以上のような出血を止める役割の凝固第Ⅷ因子、第Ⅸ因子とはまったく反対の作用をもつアンチトロンビンⅢ製剤が、昭和62年(1987)に市販されました。アンチトロンビンⅢは名前が示すように、凝固因子の一つトロンビン(活性化凝固第Ⅱ因子)等に結合して、それらの働き(凝固反応)を阻害します。このためアンチトロンビンⅢは、過剰に凝固が進んだ重篤なDIC(播種性血管内凝固症候群)の患者に使用されます。

昭和63年(1988)には、凝固因子の一つであるフィブリノゲン(凝固第Ⅰ因子)を主成分とする、フィブリン糊製剤が発売されました。これは主に、外科手術後の縫合部などからの出血を防止し、組織の接着・閉鎖を高める目的で使用されます。フィブリン糊の生体への適合性・利便性の良さや有効性の高さから、外科の分野で汎用されています。

その他、現在十数種類の血漿分画製剤が、日本の医療現場で重篤な疾患の治療に使用されています。

平成に入ってからの主な分画製剤開発の動きとしては、日本人の献血による分画製剤の国内自給化が進んでいます。また同時に、製造工程へのウイルス不活化・除去工程の強化・導入や、原料血漿へのHIV(エイズ原因ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)に対する核酸増幅試験(NAT)等の新しい検査の導入が図られ、更なる安全性の確保が進められているところです。

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