血液製剤について

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特発性血小板減少性紫斑病(ITP)〔ITP:Idiopathic Thrombocytopenic Purpura〕

通常、血小板は血液1mm3(μL)あたり15~40万個含まれており、血管が傷ついて出血した時、出血部位に集まって、傷口をふさぎ、出血を止めます。この血小板数が10万個/μL以下になる場合を「血小板減少症」と呼んでいますが、血小板が5万個/μL以下まで減少すると、止血までに時間がかかるようになり、軽い打撲で皮下に出血斑(紫斑)が出たり、鼻出血がみられるようになります。血小板減少症は様々な原因で起こりますが、自分自身の血小板を破壊する抗体(自己抗体)により発症する病気を「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」といいます。ITPでは血小板は正常あるいはそれ以上に産生されているのですが、生体内で自己抗体によりどんどん壊されてしまうため産生が追い付かず、血小板が減ってしまうのです。

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の発生原因

ITPの臨床症状は、皮膚の出血斑(紫斑)・血腫、歯肉出血、止まりにくい鼻出血、月経過多等が主なものです。また、ITPには、6ヵ月以内に治ってしまう急性型と、6ヵ月以上遷延する慢性型があり、小児におこるITPでは、急性型が約80%と多く、慢性化するのは20%程度であるのに対して、成人はこの逆で、多くが慢性化します。

ITPの治療として、下記の方法があげられます。

① 薬物療法

成人ではステロイド剤の経口投与が基本治療ですが、難治例では免疫抑制剤等の治療も行われます。

② ヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法

ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃壁に感染する細菌で、胃潰瘍の原因となることが知られています。最近、成人のITPの原因の1つはこの菌の感染であることがわかり、ヘリコバクター・ピロリ菌陽性の場合は、まず除菌療法を行うことが多くなっています。

③ 脾臓摘出

自己抗体が結合した血小板は主に脾臓で破壊されます。ステロイド剤や他の免疫抑制剤の効果が不十分な場合や、合併症などの理由でステロイド剤が投与できない場合には、血小板を増やすため外科的に脾臓を取ることも行われます。

④ 免疫グロブリン療法

免疫グロブリン製剤には、血小板を破壊する細胞の働きを抑えると共に、血小板と反応する自己抗体を減らすことなどにより、血小板を増やす効果があります。効果は一時的で根治治療にはなりませんがステロイド剤と比べて即効性です。そのため成人例では、急いで血小板数を増やしたい場合、例えば、重篤で生命を脅かす出血時や手術前、分娩前等に限り使用されています。一方、小児では重篤な出血は発症初期に起こることが多いことからできるだけ早く血小板を安全域まで増やす目的で、血小板著減例には免疫グロブリン療法が行われます。免疫グロブリン製剤は、通常1日に体重1kgあたり200~400mg/kgを5日間、連日点滴静注します。

<産業医科大学小児科学講座教授 白幡 聡先生(2008年5月監修)>

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