血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。
血漿分画製剤のいろいろ
組織接着剤は、主に手術の創部に使われる血漿分画製剤で、縫合部や切断面または切離面からの血液や体液のもれや、肺などの切断面からの空気もれを防ぐために使われます。組織や切断された臓器※1を接着・被覆する医薬品です。「フィブリン糊」と呼ばれたこともありましたが、キット化された製剤として認可を受けているものです。
手術では、基本的にからだの一部を切ること(切開;せっかい)と切り取ること(切除;せつじょ)、切った部分をつなぎ合わせること(接合;せつごう)、針と糸を使っての縫合(ほうごう)や、自動縫合器を使う断端閉鎖のときなどに、組織接着剤が必要になることがあります。健康な患者さんであれば、接合や縫合だけで傷ついた組織が自然と修復するケースが多くあります。しかし、からだの免疫力が落ちている、縫合部への緊張がかかる、組織自体がもろくなっているなどにより創傷治癒(そうしょうちゆ)の遅れが危惧(きぐ)される場合があります。このような状態の患者さんの場合には、縫合の際にできた針の穴から出血したり、縫合だけでは止血できなかった細かい血管から血液がもれ出てきたりすることがあります。そうした血液や体液により傷口の治りが遅くなることや、細菌のすみかとなり感染が起こることがあります。
このような事態を避けるために、組織接着剤で縫合時の穴や組織のすき間を埋めて組織を閉鎖することが必要な場合があります。また、手術時間が長引くと出血量が増える、感染症にかかりやすくなるなどのマイナス面がありますので、手術を短時間で終了するという目的で組織接着剤が使用されるケースもあります。
血漿成分由来の組織接着剤は、人のからだで起こる血液が固まるときの凝固反応(ぎょうこはんのう)を利用した製剤で、血漿由来のフィブリノゲンとトロンビンという凝固タンパク質を主成分としています。
生体ではケガをして血管が傷つき出血したときなど、血液中の成分のひとつであるフィブリノゲン(糸状のタンパク質)がトロンビンという酵素(こうそ)によって、フィブリンに変化します。そして数多くのフィブリンが結合して網目状の膜を作ることにより、ゲル状※2(ゼリー状)の物質になり、傷ついた血管がふさがり、止血します。
組織接着剤を手術時の縫合部分に使った場合、同じような原理で傷口をフィブリンの膜でふさぎ、縫合部分からの血液もれや肺からの空気もれなどを防止することができます。
※1 組織と臓器(器官)…組織は、形や性質や働きがよく似た細胞と細胞間の物質が集合体を作ったものです。筋肉組織、神経組織、表皮組織、結合組織の4種類の基本的な組織があります。臓器(器官)は、数種類の組織が立体的に配列されて、からだの中で特定の役割を果たします(例:目、肺、心臓など)。
※2 フィブリン・ゲル…フィブリンが網状になり、この中に水分子が固定されている半固体状態を言います(その他のゲルの例:寒天、ゼラチン)。
<慶應義塾大学医学部名誉教授 小林 紘一先生(2011年7月監修)>