血液製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

関連疾患

凝固因子欠乏症

血友病インヒビター

血友病患者さんの中には、凝固因子製剤の投与を続けるうちに、からだの免疫系が投与された第Ⅷ因子または第Ⅸ因子(以下、凝固因子と省略)を異物として認識して、これらに反応するインヒビター抗体=阻害物質)を産生することがあります。インヒビターができると、投与した凝固因子が中和され、製剤としての効果がなくなり、止血ができなくなります。

インヒビターの患者さんは、からだが作るインヒビターの量(=力価)によって、ローレスポンダーあるいはハイレスポンダーに区分されます。

1.ローレスポンダーは、インヒビター力価が5ベセスダ単位(BU)/mL未満で、治療が比較的やりやすいケースです。

2.ハイレスポンダーは、過去のインヒビター力価の最高値が5BU以上の患者さんで、治療が著しく困難になります。

血友病インヒビターの治療には、1)急性出血を抑えるための「止血療法」と、2)インヒビターを消失させるための「免疫寛容導入療法」があります。

1)止血療法

(1)第Ⅷまたは第Ⅸ因子製剤の大量投与によるインヒビター中和療法

ローレスポンダーの患者さんは、凝固因子製剤で治療します。また現在のインヒビター力価が5BU未満のハイレスポンダーの患者さんが重篤な出血や手術の時、大量の凝固因子製剤を投与して、インヒビターを中和することがあります。

(2)バイパス療法

ハイレスポンダーの患者さんとインヒビター中和療法に効果がなかったローレスポンダーの患者さんが対象となります。バイパス製剤には、血漿由来の活性型プロトロンビン複合体製剤と乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤、また遺伝子組換え活性型第Ⅶ因子製剤があります。それぞれは止血作用機序が異なると考えられていますので、種々の条件を考慮して製剤を選択します。

バイパス製剤の副作用として血栓症などが報告されています。

インヒビター患者さんの治療製剤の選択

*詳細につきましては日本血栓止血学会のホームページを参照ください。

http://www.jsth.org/

2)免疫寛容導入療法

インヒビターを消失させ、凝固因子製剤による治療を可能にする方法を「免疫寛容導入療法」と呼びます。

インヒビター患者さんに、凝固因子製剤を長期間、反復投与し、インヒビターの消失をはかります。この方法は、アレルギー治療における減感作療法と同様の考え方に基づいています。

免疫寛容導入療法を行う時、次の条件に当てはまるとインヒビターが消失する可能性が高いとされています。

  • 1.免疫寛容導入療法開始時のインヒビター力価が低い
  • 2.過去のインヒビター力価の最高値が低い
  • 3.インヒビター発生から免疫寛容導入療法までの期間が短い

*詳細につきましては日本血栓止血学会のホームページを参照ください。

http://www.jsth.org/

<新潟県立加茂病院名誉院長 高橋 芳右先生(2016年6月監修)>

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