血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。
血漿分画製剤のいろいろ
血液凝固第ⅩⅢ因子製剤は、人の血液を原料としています。第ⅩⅢ因子は止血や創傷治癒(傷の治り)に関わる因子です。ケガ等で出血した際には血液中の「血液凝固因子」という成分が働きます。血液凝固因子には第Ⅰ~ⅩⅢ(ただしⅥはありません)の12種類があり、それらが全て正常に働いて初めて血液が固まり、血が止まります。第ⅩⅢ因子は血液凝固の最終段階で働き、その他の血液凝固因子によって作られた成分を網目状につなぎ合わせることで、血液凝固を強固で安定したものにする働きがあります。
傷口からの出血に対して血液凝固第Ⅰ~ⅩⅢ(Ⅵを除く)因子が働き、止血を完了させます。
第ⅩⅢ因子は、その他の因子で作られた成分をつなぎ合わせて、強い血液凝固塊を作ります。 第ⅩⅢ因子が欠乏している場合は、強い血液凝固塊が形成されず、傷口がふさがらないため、血液凝固第ⅩⅢ因子製剤の投与を検討します。
血液凝固第ⅩⅢ因子製剤は以下の3つの症状の改善に使用できます。
血がとまりにくくなる遺伝による病気です。生まれつき血液中の血液凝固第ⅩⅢ因子が少ないため、鼻血や皮下出血、筋肉内出血などの症状が出ることがあります。そのため、第ⅩⅢ因子製剤を投与し、血を止まりやすくします。
一方、後天性血液凝固第ⅩⅢ因子欠乏症は、遺伝以外の何らかの理由で血液中の血液凝固第ⅩⅢ因子が少なくなり、出血症状をきたす病気で、先天性の病気と同じように第ⅩⅢ因子製剤を投与することにより、血を止まりやすくします。
手術などでできた傷は、まずは糸で縫い合わせるなどの方法で閉鎖し、しばらくすると周囲の組織が結合し合い修復されます。しかし、何らかの原因で血液中の血液凝固第ⅩⅢ因子が減ってしまうと、傷の治りが悪い状態(創傷治癒不全)を生じることがあります。創傷治癒不全になると、傷口から血液や体液の漏れが続きます。その結果、感染の原因となり、お腹の手術では腹膜炎を引き起こすことがあり、命に関わる事態になる可能性もあります。
さらに、消化管の傷口からもれ出た酸性の強い胃液や膵液などの消化液が臓器を溶かして孔(あな)をつくります。それが体表にまで伸びてしまうような臓器と体表の瘻孔(ろうこう)や胃と腸がくっついて孔(あな)があいてしまうような臓器同士の瘻孔(ろうこう)ができることがあります。これらもまた、傷口から細菌がはいり、感染の原因となってしまいます。
シェーンライン・ヘノッホ紫斑病はアレルギー性紫斑病とも呼ばれる幼児、学童に多い紫斑病です。症状は皮膚症状(四肢、臀部:でんぶ、顔面などに現れる紫斑など)に、腹部症状(腹痛および血便など)、関節症状(関節の疼痛、腫脹など)ならびに腎症状(血尿、蛋白尿など)を伴うことがあります。原因はアレルギーによる細い動脈や毛細血管が炎症を起こすためと考えられています。シェーンライン・ヘノッホ紫斑病の患者さんの血液中では、血液凝固第ⅩⅢ因子が低下します。腹部症状および関節症状の改善のために、血液凝固第ⅩⅢ因子製剤の投与を行います。
*(SHP…Schoenlein-Henoch purpura)
血液凝固第ⅩⅢ因子は12個ある血液凝固因子の中で最後に発見された因子です。またその生物学的な役割が明らかになったのは、1960年にDuckertらが先天的に第ⅩⅢ因子を欠損している患者さんを発見してからのことです。
第ⅩⅢ因子が欠損した患者さんでは出血傾向(血が止まりにくい状態)や創傷治癒不全(傷の治りが悪い状態)が観察されたことから、第ⅩⅢ因子が止血や創傷治癒に関わる働きがあることがわかってきました。翌1961年にはBeckらによって、傷が治癒するために必要なコラーゲンを産生する繊維芽細胞の発生に第ⅩⅢ因子が関わっていることが示されました。
この製剤は、人の血液を原料として作られたものです。
製剤の製造に当たっては、今日の医学水準で考えうる安全性対策をおこなっていますが、血液を原料としていますので、ウィルス感染などのリスクを完全に否定できません。
血液凝固第ⅩⅢ因子製剤も他の血漿分画製剤と同様の安全対策を実施しております。
1)採血時の問診・診察
2)原料血漿の感染症に関する検査
3)原料血漿の貯留保管
4)製造工程でのウイルス不活化・除去
①加熱処理(パスツリゼーション)
下記の通り、他の血漿分画製剤と同様の安全対策を実施しておりますが、詳細は当協会ホームページの血液製剤について「血漿分画製剤の安全性」をご参照ください。
重大な副作用にはショックが挙げられます。その他の副作用には、発熱の報告などがあります。
<がん研有明病院消化器外科上部消化管担当副部長/
徳島大学病院外科消化器・移植外科臨床教授 比企 直樹先生(2014年12月監修)>