血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

アルブミン製剤

アルブミンの働き

アルブミンの働きは、主に次に述べる①水分を保持し、血液を正常に循環させるための浸透圧の維持と、②体内のいろいろな物と結合し、これを目的地に運ぶ運搬作用があります。

1.浸透圧※の維持

浸透圧について浸透圧について

浸透圧は、濃度の異なる2つの水溶液(たとえばアルブミンの水溶液)が半透膜(たとえば血管の壁)をはさんで接した時生じます。半透膜には、水などの小さな分子を通す小さな穴が開いています。血管の場合、アクアポリンと呼ばれるタンパク質でできた水を通す穴が開いています。しかし、この半透膜はアルブミンなどの大きな分子は通しません。液体や気体は原子や分子のレベルで観察すると盛んに動き回っています。遮るものが無いと、原子や分子は四方八方に「拡散」してしまいます。半透膜を通して水は拡散することができます。半透膜を通しての拡散は「浸透」と呼ばれます。アルブミンは半透膜を通れず、浸透できません。この結果、水はアルブミン濃度の低い水溶液から濃度の濃い水溶液側に移動し、浸透圧を生じることになります。浸透圧は、溶質(この場合アルブミン)が半透膜にぶつかり生じる圧力である、との見方もできます。

浸透圧は、単位容積(たとえば1mm3)にある溶質(たとえばアルブミン)の個数によって決まります。溶質が小さければ小さいほど、またたくさんあればあるほど高い浸透圧が得られます。アルブミンは、主な血漿タンパク中最小で、最も多くありますので、浸透圧が最も強く出ます。アルブミンは1gで20mLの水を保つことができます。アルブミン製剤はいろいろな病態に適応されますが、それはアルブミンの浸透圧作用に基づくものです。アルブミンは、血液の膠質浸透圧〔こうしつしんとうあつ〕の維持に中心的な役割を担います。(膠質浸透圧の約80%を担います)

【浸透圧について】
浸透圧について

※浸透圧:アルブミンによって生じる浸透圧は、「膠質浸透圧」〔こうしつしんとうあつ〕と呼ばれます。これは晶質〔しょうしつ〕である塩化ナトリウム(食塩)でできた0.9%生理食塩水による浸透圧効果が「晶質浸透圧」と呼ばれることと対をなしています。膠質(コロイド)とは、直径10~1000A(オングストローム、10-8cm)の粒子(たとえばアルブミン)が媒体(たとえば水)の中に分散している状態のものです。一方、晶質は結晶可能な物質という意味です。塩化ナトリウムは、過飽和の水溶液から容易に結晶化します。このため塩化ナトリウムは晶質であると呼ばれます。反面、アルブミンはその分子にたくさんの物質が結合していること、また、多数のタンパク質を含む血漿から100%近い純度で取り出せないため、結晶化することが困難です。このため晶質とは言われず、膠質と呼ばれます。このような物の性質の違いにより、「膠質浸透圧」と「晶質浸透圧」の言葉の使い分けがなされています。

2.結合と運搬

アルブミンは、いろいろな物質と結合する力が強い血漿タンパク質です。この結合力は、①アルブミンが分子内の多くの場所でプラス、マイナスに帯電しているために生じます。また、②アルブミンは周囲の変化に対応して柔軟に分子の構造を変える「構造適応性」があること、③アルブミン分子表面には「つぎはぎの疎水性領域」があることが、結合力の原因と考えられています。

アルブミンは、カルシウムや亜鉛などの微量元素や、脂肪酸、酵素、ホルモン、薬などと結合します。概して、物質を結合することでアルブミンは安定度が高まります。たとえば、アルブミン1分子は脂肪酸の2分子と強く結合して、アルブミンを更に安定化しています。そして、アルブミンは、これらをからだの必要とする目的部位へ運搬します。

また、毒素などと結合して中和する作用などもあります。アルブミンは、物質の保管庫(リザ−バー)の働きがあります。物質がアルブミンと結合することで、その物質の血中濃度が低下します。このため毒物への緩和(中和)作用が働きます。

アルブミンの働き要素の凡例

<富山大学診療教授 安村 敏先生(2020年3月監修)>

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