血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

アルブミン製剤

アルブミン製剤の適正使用

アルブミン製剤の適正使用については、「血液製剤の使用指針」(厚生労働省医薬・生活衛生局:平成31年3月)に詳しく記載されています。これに従って医療機関では病態の改善に使用されています。

「アルブミン製剤の適正使用(血液製剤の使用指針 厚生労働省医薬・生活衛生局:平成31年3月)」より

1. 目的

アルブミン製剤を投与する目的は、血漿膠質浸透圧を維持することにより、循環血漿量を確保することにある。

2. 適応の現状と問題点

アルブミン製剤(人血清アルブミンおよび加熱人血漿たん白)が、低栄養状態への栄養素としてのタンパク質源の補給にいまだに用いられている。しかしながら投与されたアルブミンは体内で代謝され、多くは熱源となり、タンパク質合成にはほとんど資さないので、タンパク質源の補給という目的は達成し得ないばかりか、アルブミン製剤の投与によって、生体内でのアルブミン合成を低下させるおそれがある。

なお近年の研究により、周術期において、アルブミン合成が健常状態よりも亢進していること、またアミノ酸を含む適切な栄養管理により、生体内のアルブミン合成が促されることがわかってきている1)。したがって、タンパク質源の補給のためには、経静脈栄養法や経腸栄養法による栄養状態の改善が優先されるべきである。

循環血漿量確保の目的では、アルブミン製剤以外に、細胞外液補充液や人工膠質液(ヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤、デキストラン製剤)があるが、これらの製剤よりもアルブミン製剤が有利であるとするエビデンスは乏しく、病態に応じて使い分ける必要がある。

また、低アルブミン血症は認められるものの、それに基づく臨床症状を伴わないか、軽微な場合にも検査値の補正のみの目的で、アルブミン製剤が用いられているが、そのエビデンスは明示されていない。

  • ※ アルブミン製剤の自給推進

我が国のアルブミン製剤の使用量は、原料血漿換算で、過去の最大使用量の384万L(1985年)から99万L(2018年)へと約85%急減したものの、国内自給率は64%(2018年)である。

(引用:「令和元年度第2回血液事業部会 資料 令和2年度の血液製剤の安定供給に関する計画(案)」より)


3. 使用指針

低アルブミン血症の原因は、出血、毛細血管の浸透性の増加、腎臓からの排泄過剰などによる喪失、代謝の亢進、肝臓の合成低下、術中輸液による希釈などである。

アルブミン製剤は急性の低タンパク血症に基づく病態、または他の治療法では管理が困難な慢性低タンパク血症による病態を一時的に改善させる目的で用いられる。つまり膠質浸透圧の改善、循環血漿量の是正が主な適応であり、通常前者には高張アルブミン製剤(高膠質浸透圧アルブミン製剤)、後者には等張アルブミン製剤(等膠質浸透圧アルブミン製剤)あるいは加熱人血漿たん白を用いる。

これまでの指針に引き続き、急性および慢性低タンパク血症へのトリガー値を、それぞれ血清アルブミン値3.0g/および2.5g/dLとするが、アルブミン製剤投与の明確なトリガー値を示したエビデンスは乏しい。

また、低アルブミン血症の評価には血清アルブミン値の測定が不可欠であることから、従来の基準値を引き続き参考値として示している。

1) 出血性ショック

出血性ショックに陥った場合には、循環血液量の30%以上が喪失したと考えられる。そのような30%以上の出血をみる場合には、初期治療としては、細胞外液補充液(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液など)の投与が第一選択となり、人工膠質液の併用も推奨されるが、原則としてアルブミン製剤の投与は必要としない。

循環血液量の50%以上の多量の出血が疑われる場合や血清アルブミン濃度が3.0g/dL 未満の場合には、等張アルブミン製剤の併用を考慮する。

循環血漿量の補充量は、バイタルサイン、尿量、中心静脈圧や肺動脈楔入圧、血清アルブミン濃度、更に可能であれば膠質浸透圧を参考にして判断する。

なお、出血により不足したそのほかの血液成分の補充については、各成分製剤の使用指針により対処する。

2) 敗血症

敗血症や敗血症性ショックに伴う急性低タンパク血症において、患者の生命予後の改善に関しては、細胞外液補充液と比較して、アルブミン製剤の優位性を示すエビデンスに乏しい。

したがって、このような患者の初期治療には細胞外液補充液を第一選択薬とすることを強く推奨する[1B]2)。なお、大量の晶質液を必要とする場合などは、細胞外液補充液として、アルブミン製剤の投与を考慮してもよい。

3) 人工心肺を使用する心臓手術

通常、心臓手術時の人工心肺の充填には、主として細胞外液補充液が使用される。

人工心肺実施中の血液希釈で起こった低アルブミン血症は、血清アルブミンの喪失によるものではなく一時的なものであり、利尿により術後数時間で回復することから、アルブミン製剤による補正を推奨しない[2D]。

ただし、術前に低アルブミン血症が存在する心臓手術患者において、アルブミン製剤の投与が術後腎機能障害の発生を低下させる、とのエビデンスが報告されている。

術前より血清アルブミン濃度または膠質浸透圧の高度な低下がある場合、あるいは体重10kg未満の小児の場合などには、等張アルブミン製剤が用いられることがある。

4) 肝硬変に伴う難治性腹水に対する治療

肝硬変などの慢性の病態による低アルブミン血症は、それ自体ではアルブミン製剤の適応とはならない。肝硬変ではアルブミンの生成が低下しているものの、生体内半減期は代償的に延長していること、また、アルブミンの投与によって、かえってアルブミンの合成が抑制され分解が促進されること、がその理由である。

しかしながら、非代償性肝硬変に伴う難治性腹水に対する治療において、以下の4つに関しては、高張アルブミン製剤の使用を強く推奨する。①利尿薬による腹水消失を促進して、腹水の再発を抑制するとともに患者の生命予後も改善する[1B]。②大量(4L以上)の腹水穿刺による循環不全を予防するとともに患者の生命予後も改善する[1A]。③特発性細菌性腹膜炎を合併した患者の循環不全を改善して、肝腎症候群の発症を抑制する[1A]。④肝腎症候群に対して、強心薬との併用で腎機能を改善するとともに、肝臓移植前に使用することで、移植後の予後を改善する[1A]。

5) 難治性の浮腫、肺水腫を伴うネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群などの慢性の病態は、通常アルブミン製剤の適応とはならない。むしろ、アルブミンを投与することによってステロイドなどの治療に抵抗性となることが知られている。

ただし、急性かつ重症の末梢性浮腫、あるいは肺水腫に対しては、利尿薬に加えて、緊急避難的に高張アルブミン製剤を使用することを推奨する[2D]。

6) 循環動態が不安定な体外循環実施時

血液透析等の体外循環実施時において、特に糖尿病を合併している場合や術後などで低アルブミン血症のある場合には、循環動態が不安定となり、低血圧やショックを起こすことがあるため、循環血漿量を増加させる目的で等張アルブミン製剤の予防的投与を行うことがある。

ただし通常は、細胞外液補充液を第一選択とすることを推奨する[2C]。

7) 凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換療法

治療的血漿交換療法には、現在さまざまな方法がある。有害物質が同定されていて、選択的または準選択的有害物質除去の方法が確立されている場合には、その方法を優先する。それ以外の非選択的有害物質除去や、有用物質補充の方法として、血漿交換療法がある。

ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発(根)神経炎、急性重症筋無力症など凝固因子の補充を必要としない症例では、置換液として等張アルブミン製剤を使用することを強く推奨する[1A]。アルブミン製剤の使用は、感染症などの輸血副作用の危険がほとんどなく、新鮮凍結血漿の輸血と比較してより安全である。

膠質浸透圧を保つためには、通常は、等張アルブミン若しくは高張アルブミンを電解質液に希釈して置換液として用いる。血中アルブミン濃度が低い場合には、等張アルブミンによる置換は、肺水腫等を生じる可能性があるので、置換液のアルブミン濃度を調節する等の注意が必要である。

加熱人血漿たん白は、まれに血圧低下を来すので、原則として使用しない。やむを得ず使用する場合は、特に血圧の変動に留意する。1回の交換量は、循環血漿量の等量ないし1.5倍量を基準とする。開始時は、置換液として人工膠質液を使用することも可能な場合が多い。(血漿交換の置換液として新鮮凍結血漿が用いられる場合については、新鮮凍結血漿の項を参照すること)

8) 重症熱傷

重症熱傷症例では、急性期の輸液において、生命予後や多臓器障害などの合併症に対するアルブミン製剤を含むコロイド輸液の優越性は、細胞外液補充液と比較して、明らかではない3)

総輸液量の減少、一時的な膠質浸透圧の維持、腹腔内圧の上昇抑制を目的とする場合は等張アルブミン製剤の投与を推奨する[2B]4)

9) 低タンパク血症に起因する肺水腫あるいは著明な浮腫が認められる場合

肺水腫あるいは著明な浮腫がみられた場合には、まずは減塩・水分制限とループ利尿薬で治療する。

術前、術後、あるいは経口摂取不能な重症の下痢などによる低タンパク血症が存在し、治療抵抗性の肺水腫あるいは著明な浮腫が認められる場合は、限定的に高張アルブミン製剤の投与を推奨する[2B]。

ただし、重症患者の予後改善に対するアルブミン製剤の有効性は示されていない。

10) 循環血漿量の著明な減少を伴う急性膵炎など

急性膵炎、腸閉塞などにより、循環血漿量の著明な減少を伴うショックを起こした場合には、等張アルブミン製剤の投与を推奨する[2D]。

11) 妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群では、タンパク尿の存在やタンパク質の血管外漏出などに伴って、低タンパク血症を来すことが多い。更に高血圧が重度になると、循環血漿量が減少して血液濃縮状態になることから、循環血漿量を増やす目的でアルブミン製剤が使用されてきた。

降圧剤などを投与し、利尿が減少し、乏尿となるような症例では、等張アルブミン製剤投与を推奨するが[2D]、過剰投与はむしろ病態の悪化を来すことに留意する。

12) 他の血漿増量剤が適応とならない病態

アルブミン製剤以外の代用血漿剤には、ヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤、デキストラン製剤があるが、血液凝固障害や急性腎不全等への注意が必要である。なお、投与量に上限が設けられているため、大量投与が必要な症例には、アルブミン製剤の使用を検討する。

また、うっ血性心不全、乏尿等を伴う腎障害やアナフィラキシーなど製剤に対するアレルギー症状がみられる場合には、アルブミン製剤を投与する。

アルブミン製剤以外の代用血漿剤の使用が困難な症例には、アルブミン製剤を使用することを強く推奨する[1B]。

4. 投与量
  • ・期待上昇濃度(g/dL)=目標の血清アルブミン濃度 - 現在の血清アルブミン濃度
  • ・循環血漿量(dL)=0.4dL/kg(体重1kgあたりの循環血漿量)×体重(kg)
  •   *体重1kgあたりの循環血液量を70mL/kg、Ht 値43%と仮定
  • ・投与したアルブミンの血管内回収率:40%

とすると、必要投与量は以下の計算式から算出される。

  • 必要投与量(g)
  • =期待上昇濃度(g/dL)×循環血漿量(dL)×100/40
  • =期待上昇濃度(g/dL)× 0.4dL/kg × 体重(kg)×2.5
  • =期待上昇濃度(g/dL)×体重(kg)

必要な投与量は、患者の病状に応じて、通常2~3 日間で分割投与する。

アルブミン1g を投与した場合に期待される血清アルブミン濃度の上昇(g/dL)は、体重x kgとすると、

  • [アルブミン1g×血管内回収率(40/100)]/[循環血漿量(dL)]
  • =0.4g /(0.4dL/kg ×x kg)
  • =1/x(g/dL)」

すなわち、体重の逆数であらわされる。

しかしながら、大手術、外傷、熱傷、敗血症やショックなどの病態においては、アルブミンの血管外漏出率が高まっており、血管外のアルブミン濃度は更に増加するので、期待値に至らないことが多い。

5. 効果の評価

アルブミン製剤の投与前には、その必要性を明確に把握し、必要とされる投与量を算出する。投与後には投与前後の血清アルブミン濃度と臨床所見の改善の程度を比較して効果の判定を行い、診療録に記載する。

あくまでも参考ではあるが、投与後の目標血清アルブミン濃度として、急性の場合は3.0g/dL以上、慢性の場合は2.5g/dL以上を用いると良い。

投与効果の評価は3日間を目途に行い、使用の継続を判断し、漫然と投与し続けることのないように注意する。

6. 不適切な使用

1) タンパク質源としての栄養補給

投与されたアルブミンは体内で緩徐に代謝(半減期は約17日)され、そのほとんどは熱源として消費されてしまう。

アルブミンがアミノ酸に分解され、肝臓におけるタンパク質の再生成の原料となるのはわずかで、利用率がきわめて低いことや、必須アミノ酸であるトリプトファン、イソロイシンおよびメチオニンがきわめて少ないことなどから、栄養補給の意義はほとんどないため、推奨しない[2C]。

手術後の低タンパク血症や悪性腫瘍に使用しても、一時的に血漿タンパク濃度を上昇させて膠質浸透圧効果を示すのみで、予後を改善させる意義はなく、生体内でのアルブミン合成を低下させる可能性もあることから、推奨しない[2C]。

栄養補給の目的には、経静脈栄養法、経腸栄養法によるタンパク質源の投与とエネルギーの補給がタンパク質の生成に有効であることが、栄養学において定説となっている。特に急性期においては、アミノ酸の投与によってアルブミンの合成も促進することが知られており、積極的な栄養管理が重要である5)

2) 脳虚血(頭部外傷)

重症頭部外傷患者、および急性脳梗塞の初期治療においては、循環血漿量低下に対する治療には細胞外液補充液を用いる。等張アルブミン製剤は患者の生命予後を悪化させる危険性があることから投与しないことを強く推奨する[1A]。

クモ膜下出血後の血管攣縮においては、循環血液量を保つために晶質液で反応がみられない場合、等張アルブミン製剤の投与を推奨する[2C]。

3) 炎症性腸疾患

炎症性腸疾患患者にみられる低アルブミン血症は低栄養、炎症、腸管からのタンパク漏出などによって生じる。

低アルブミン血症に対しては原疾患の治療や栄養療法で対応することが原則であり、アルブミン製剤投与は控える。

4) 周術期の循環動態の安定した低アルブミン血症

周術期には、肝臓でのアルブミン産生はむしろ増加するものの、血管透過性の亢進、輸液等による体液希釈などが主な原因となり、低アルブミン血症が認められる。周術期の循環動態の安定した低アルブミン血症に対してアルブミン製剤投与を控えることを推奨する[2C]。

5) 単なる血清アルブミン濃度の維持

血清アルブミン濃度が2.5~3.0g/dLでは、末梢の浮腫などの臨床症状を呈さない場合も多く、血清アルブミン濃度の維持や検査値の是正のみを目的とした投与は行うべきではない。

6) 終末期患者への投与

終末期患者に対しては、患者の意思を尊重しない延命措置は控える、という考え方が容認されつつある。患者の意思を尊重しない投与は控える。

7. 使用上の注意点

1) ナトリウム含有量

各製剤中のナトリウム含有量[3.7mg/mL(160mEq/L)以下]は同等であるが、等張アルブミン製剤の大量使用はナトリウムの過大な負荷を招くことがある。

2) 肺水腫、心不全

高張アルブミン製剤の使用時には急激に循環血漿量が増加するので、輸注速度を調節し、肺水腫、心不全などの発生に注意する。なお、20%アルブミン製剤50mL(アルブミン10g)の輸注は約200mLの循環血漿量の増加に相当し、25%アルブミン製剤50mL(アルブミン12.5g)の輸注は約250mLの循環血漿量の増加に相当する。

3) 血圧低下

加熱人血漿たん白の急速輸注(10mL/分以上)により、血圧の急激な低下を招くことがある。

4) 利尿

利尿を目的とするときには、高張アルブミン製剤とともに利尿薬を併用する。

5) アルブミン合成能の低下

慢性のみならず、急性の病態に対する使用でも、アルブミンの合成能の低下を招くことがある。特に血清アルブミン濃度が4g/dL以上では合成能が抑制される。



注)指針の推奨度は「血液製剤の使用指針 P.6」より抜粋したものであり、具体的な定義については以下をご確認ください。


学会ガイドランの記述方式に従って、使用指針の推奨の強さ、及びエビデンスの強さを「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」1)に準じて、以下の基準で表現した。

推奨の強さは、「1」:強く推奨する、「2」:推奨するの2通りで提示し、アウトカム全般のエビデンスの強さについては、以下のA、B、C、Dを併記している。

A(強):効果の推定値に強く確信がある

B(中):効果の推定値に中程度の確信がある

C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である

D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない

なお、推奨の強さ及びエビデンスの強さが示されていない多くの記述については、エビデンスがないか、あるいはあっても著しく欠乏しているものであり、その記述は、専門家としての意見に留まるものとした。


文献

  • 1) 福井次矢、山口直人:「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」医学書院



文献

  • 1) Hulshoff A, Schricker T, Elgendy H, et al. Albumin synthesis in surgical patients. Nutrition. 2013; 29(5): 703-707.
  • 2) Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock: 2016. Crit Care Med. 2017; 45(3): 486-55.
  • 3) Eljaiek R, Heylbroeck C, Dubois MJ. Albumin administration for fluid resuscitation in burn patients: A systematic review and meta-analysis. Burns. 2017; 43(1): 17-24.
  • 4) 日本熱傷学会 「熱傷診療ガイドライン」改訂第2版
  • 5) Konosu M, Iwaya T, Kimura Y, et al. Peripheral vein infusions of amino acids facilitate recovery after esophagectomy for esophageal cancer: Retrospective cohort analysis. Ann Med Surg. 2017; 14: 29-35.

<富山大学診療教授 安村 敏先生(2020年3月監修)>

ページトップ