血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。
血漿分画製剤のいろいろ
組織接着剤には前述のように、「液状組織接着剤」と「シート状組織接着剤」の2種類があります。
液状組織接着剤は手術のとき水溶液としてスプレーなどで適用部位に吹き付けます。一方、シート状組織接着剤は、はり薬のような形をしていて手術時に包装から取り出し、そのまま適用部位にはり付けます。
液状組織接着剤は、主成分のフィブリノゲンやトロンビンを水溶液にして使用します。他方、シート状組織接着剤はコラーゲンで出来ているシート状支持体の片方の面(接着面)にフィブリノゲンとトロンビンが乾いた状態で付着しています。
いずれの製剤の場合であっても、これらの製剤がからだの適用部位に接触すると、トロンビンがフィブリノゲンに作用して、これをフィブリンに変え、フィブリン同士が連鎖的に反応して、フィブリン膜(フィブリン・ゲル)を作り、組織のすき間を埋めます。
それぞれの製剤の成分は下表のようになっています。
液状組織接着剤とシート状組織接着剤の両者に共通の成分は、フィブリノゲン、トロンビン、アプロチニンです。フィブリノゲンとトロンビンが反応することでフィブリン膜が生成されます。フィブリン膜はからだの中にあるプラスミンという酵素(こうそ)によって分解されるため、この酵素の働きを止めるアプロチニンというタンパク質が加えられています。液状組織接着剤だけにある第ⅩⅢ(じゅうさん)因子やカルシウムイオンは、フィブリンの網目を強固にするのを助ける凝固因子です。シート状組織接着剤だけにあるコラーゲンは、この製剤の成分(フィブリノゲン、トロンビン、アプロチニン)を支える土台となるシートの役割を果たしています。
液状組織接着剤やシート状組織接着剤は下表のような特徴があります。
2種類の製剤は、この表のようにそれぞれの利点と欠点をあわせ持っています。手術部位の形状 に合わせそれぞれ利点と欠点を考え、どちらかの製剤を選択します。
液状組織接着剤の場合、主成分のフィブリノゲンとトロンビンが別々のガラスびんに粉末の状態で入っています。使用直前にそれぞれを別の溶解液で溶かして注射器様の2液混合セットに充填してからスプレーなどを用いて使います。そのために手間がかかるという欠点があります。一方のシート状組織接着剤は、包装から取り出して傷口に押し当てる(3~5分)だけですむので便利です。
また、シート状組織接着剤はかさばるため手術部位の奥まったところや狭いところに届きにくいなどの欠点があり、このような観点から液状組織接着剤が選択されます。シート状組織接着剤は、脳神経外科の領域では保険適応されておらず、この分野では使えないため液状組織接着剤が使われます。
液状組織接着剤とシート状組織接着剤のどちらを選ぶかは、この表にある両者の特徴を比較して決めることになります。
<慶應義塾大学医学部名誉教授 小林 紘一先生(2011年7月監修)>