血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。
血漿分画製剤のいろいろ
シート状組織接着剤は、コラーゲン(タンパク質)のシートの片面にフィブリンの膜を作るフィブリノゲンとトロンビンという血を固まらせる凝固タンパク質が乾燥した状態で付着しています。
シート状組織接着剤の安全性は、各成分タンパク質の安全性で示すことができます。
シート状組織接着剤のヒト血漿由来成分タンパク質フィブリノゲンは、次のような流れで製造されます。
人の血漿から得られたフィブリノゲンのウイルスに対する安全対策は以下のような方法が講じられています。
採血の際は、医師などによる問診が実施され、採血基準に適合する供血者のみを対象として、採血がなされます。その後、ウイルス等の感染症関連の検査を行い、合格した血漿だけが原料として製造に使われます。
原理の異なる2つ以上のウイルス安全対策が講じられています。具体的には、次のようなウイルス不活化・除去工程の選択や組み合わせが行われています。
有効成分が壊れないよう、一定の時間と温度で加熱し、ウイルスを不活化させる方法です。60℃で20時間の液状加熱が行われています。
クロマトグラフィー※1では、目的タンパク質をその他の成分から分離(ぶんり)すると同時にウイルスの除去もできます。
※1 クロマトグラフィーは、固定相(例えば、ろ紙や樹脂など)を移動相(例えば、液体やガス)が通過する時、移動相に含まれる物質の種類により通過速度が異なることを利用して、移動相にある複数の物質を分離する方法です。
以上のように、原料となるヒト血液を採取する際には、問診、感染症関連の検査を実施するとともに、製造工程で不活化・除去処理等を実施し、感染症に対する安全対策を講じています。しかし、ヒト血液を原材料としているのでウイルス等の感染症伝播(でんぱ)のリスクを完全に排除することはできないため、病気の治療上の必要性を十分に検討した上で製剤を使用すること、とされています。
シート状組織接着剤にはウシ由来のタンパク質が含まれていますが、それらタンパク質は次のような工程で作られ、安全対策が講じられています。
シート状組織接着剤に使用されているコラーゲンはウマ腱(けん)より抽出(ちゅうしゅつ)されています。
ウマコラーゲンの製造工程においては酸性処理を実施して、ウイルスの不活化を行っています。
製造された製剤は最終の品質検査を行い、合格したものだけが製品として出荷されます。
重大な副作用としては、ショック、黄疸(おうだん)、肝機能障害が報告されています。この他にも吐き気、発熱、頭痛、胸痛等の報告があります。
<慶應義塾大学医学部名誉教授 小林 紘一先生(2011年7月監修)>