血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。
血漿分画製剤のいろいろ
血友病AまたはBは、第Ⅷ因子または第Ⅸ因子が質的に変化しているか、量的に減少しているために生じます。血の止まる仕組みは、「一次止血」と「二次止血」に区別できます。フォン・ヴィレブランド病(VW病又はVWD)は「一次止血」、血友病は「二次止血」が障害されている病気です。
血管が破れると血管の収縮が起こり、傷口を小さくします。
次に血液中にある血小板が傷口に集まってきて、VWFを仲介して傷口と結合し、血小板による血栓(けっせん)を作り、傷口をふさぎます。
これが一次止血(血小板血栓)と呼ばれるものです。
血小板だけの血栓では、血を止めるには脆くて不安定です。
そこで、一次止血に引き続き、血液中の凝固因子と呼ばれる一群のタンパク質が働き、最終的にはフィブリンの網の膜が血小板血栓の全体をおおい固めて、止血が完了します。これを二次止血(フィブリン血栓)と呼んでいます。
二次止血は複雑な過程を経ます。
この止血の過程には、12種類の凝固因子(第Ⅳ因子以外はタンパク質)が関係しています。これらには、概して発見された順に、ローマ数字でⅠ(いち)からⅩⅢ(じゅうさん)までの名称が与えられています(ただし、この中で第Ⅳ(よん)因子はCa2+(カルシウムイオン)、第Ⅵ(ろく)因子は欠番)。
これらの凝固因子は下図で見るように、次々に反応を引き起こして、最後にフィブリン(第Ⅰ因子、フィブリノゲンが変化したもの)の網の膜を作って血小板血栓をおおい固めて、二次止血が終了することになります。この反応の機構が滝の流れる様子に似ているので「カスケード(瀑布)理論」と呼ばれています。下図の中で示されている「内因系」は、血管内の凝固因子で起こる凝固を指し、「外因系」というのは、破壊された組織からの成分(第Ⅲ因子)から始まる凝固を意味しています。
(カスケード理論の図は用語集の「止血」の項にも掲載しています。)
血友病AまたはBは、これら凝固因子の中で第Ⅷ因子または第Ⅸ因子に異常が生じ、出血を止める凝固反応の流れが止まるために生じる出血性の疾患です。
治療としては、人の血漿の中から第Ⅷ因子または第Ⅸ因子を分離・精製し、製剤化し、患者さんに投与することで、血中の第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の量を増やし、止血作用を正常に戻します。近年では、遺伝子組換えによる製剤も利用できるようになりました。上表には、各凝固因子の特性を挙げました。
<聖マリアンナ医科大学小児科学特任教授 瀧 正志先生(2009年2月監修)>