血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。
血漿分画製剤のいろいろ
血友病Aの患者さんの治療には、血漿由来第Ⅷ因子製剤と遺伝子組換え型第Ⅷ因子製剤が使用されます。血漿由来第Ⅷ因子製剤と遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤の止血効果は同等です。
血友病Aの治療法には、(1)出血時に投与する方法「オンデマンド=on-demand療法」と、(2)出血の有無にかかわらず、定期的に第Ⅷ因子製剤を投与する「定期補充療法」が行われています。オンデマンド療法では、出血時の部位や症状に応じて、注射の投与量や追加投与などを決めます。表に日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会で策定されたガイドラインの一部を示します。この表は血友病AとBに共通です。なお個々の患者さんの第Ⅷ因子の必要量は次のように計算されます。
必要投与量(単位)=体重(kg)×目標ピークレベル(%)×0.5
血友病Bの患者さんの治療には、モノクローナル抗体精製第Ⅸ因子製剤、第Ⅸ因子複合体製剤あるいは遺伝子組み換え型第Ⅸ因子製剤が使用されます。血友病Aの場合と同じように、(1)オンデマンド療法と(2)定期補充療法が行われています。オンデマンド療法では血友病Aと同様に出血状況に応じて注射の投与量や追加投与などを決めます。計算式は以下の通りです。
必要投与量(単位)=体重(kg)×目標ピークレベル(%)×[1~1.4]* *血漿由来製剤の場合は約1、遺伝子組換え第Ⅸ因子製剤の場合は1~1.4となるが、特に第Ⅸ因子の場合は上昇率の個人差が大きいので、個々に輸注試験をして回収率を確認することが望ましい。
出典:インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版より(B、Ⅲ)、(C、Ⅳ)は、勧告のグレードとエビデンスレベルを示しています。
*詳細につきましては日本血栓止血学会のホームページを参照ください。
血友病インヒビターの患者さんの止血治療にはインヒビター製剤(バイパス製剤)が使用されます。インヒビター製剤には三種類あります。血漿から作られる活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)と乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤(FⅦa/FⅩ)、また遺伝子組換え法により作られる組換え型活性化第Ⅶ因子製剤(rFⅦa)です。インヒビター製剤を用いた止血治療の実際については以下をご参照ください(各製剤の添付文書及び日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会で策定されたガイドラインの一部引用)。
(1)活性型プロトロンビン複合体製剤は、出血症状に応じて50~100単位/kgを8~12時間間隔で投与します。活性型プロトロンビン複合体製剤の投与に際しては次の点に注意が必要です。
(2)遺伝子組換え型活性化第Ⅶ因子製剤は、90μg/kg~120μg/kgを2~3時間毎に十分な止血効果が得られるまで投与します。小児では半減期が短いため、2時間毎に投与する事が望ましいとされています。投与に際しての留意点としては、次のことが挙げられています。
大手術及び進行性アテローム硬化症、挫滅創のある患者さん、マウス、ハムスター、又はウシタンパク質に対する過敏症があると思われる患者さんには慎重に投与します。「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」への投与は原則禁忌となっています。
(3)乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤は、活性化人血液凝固第Ⅶ因子として、体重1kg当たり症状に応じて1回60~120μgを投与します。追加投与を行う場合は、初回投与から8時間以上の間隔をあけて行い、初回投与の用量と合わせて、体重1kg当たり180μgを超えない用量とします。投与に際しての留意点としては、次のことが挙げられています。
*詳細につきましては日本血栓止血学会のホームページを参照ください。
<聖マリアンナ医科大学小児科学特任教授 瀧 正志先生(2016年6月監修)>