血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。
血漿分画製剤のいろいろ
凝固因子製剤にはヒト血漿から分離・精製し、製剤化するものと、遺伝子組換えにより細胞培養で発現された第Ⅷ因子あるいは第Ⅸ因子を分離・精製し、製剤化するものがあります。
採血の際は、医師などによる問診が実施され、採血基準に適合する供血者のみを対象として、採血がなされます。その後、ウイルス等の感染症関連の検査を行い、合格した血漿だけが原料として製造に使われます。
製剤によって様々なウイルス安全対策が採られています。具体的には、次のようなウイルス不活化・除去工程の選択や組み合わせが行われています。通常、原理の異なる2つ以上の不活化・除去方法が製造工程に組み込まれています。
有効成分を失活させないよう一定の時間と温度で加熱し、ウイルスを不活化させる方法です。
ウイルスには、その表面がエンベロープという脂質の膜で覆われたエンベロープ型ウイルスと脂質の膜を持たない非エンベロープ型ウイルスに大別されます。S/D処理は、エンベロープ型ウイルスに対して有効で、界面活性剤でエンベロープ膜を破壊し、このタイプのウイルスを不活化させます。
ウイルスの大きさは20~300nmですが、ウイルスを除去するために目の細かい膜(ウイルス除去膜)を通しています。
製造された製剤は最終の品質検査を行い、合格したものだけが製品として出荷されます。
以上のように、原料となるヒト血液を採取する際には、問診、感染症関連の検査を実施すると共に、製造工程における不活化・除去処理等を実施し、感染症に対する安全対策を講じています。しかし、ヒト血液を原材料としていることを原因とするウイルス等の感染症伝播のリスクを完全に排除することはできないため、病気の治療上の必要性を十分に検討した上で製剤を使用すること、とされています。
遺伝子組換え型製剤については、人の血液を使わないことから血液を介する感染症のリスクはない、あるいはきわめて少ないと考えられています。
重大な副作用としてはアナフィラキシー様症状が挙げられます。 その他の副作用としては発熱、顔面紅潮、じんま疹、悪心、腹痛、倦怠感、頭痛、溶血性貧血、血圧上昇、悪寒、腰痛、発疹、違和感、血管痛、結膜の充血等の報告があります。これらの副作用は、凝固因子製剤の純度が高くなった現在ではきわめて稀となっています。
<聖マリアンナ医科大学小児科学特任教授 瀧 正志先生(2009年2月監修)>