血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

アンチトロンビン製剤

血液の凝固作用と制御の仕組み

止血は、まず血管の破れを血小板がふさぎ、一次止血が完了します。次に、組織因子をはじめとした凝固因子が次々に反応して、フィブリンの網の膜が血小板血栓を覆い、フィブリン血栓ができます(二次止血)。この二次止血は、主に血管内の二種類の反応系で制御されています。

一つは、アンチトロンビン(AT)による過剰な反応の制御で、もう一つの反応系はトロンボモジュリン(TM)とプロテインC(PC)の制御系です(図 凝固作用と制御)。これらの制御系は、①凝固が血管の破れたところにだけ起こるようにする働きと、②血栓が不必要に出来すぎないようにする大事な役目を担っています。

アンチトロンビンは、凝固の連鎖反応(カスケード)の中で生じる、トロンビン(活性化第Ⅱ因子、Ⅱa)、活性化第Ⅹ因子(Ⅹa)、活性化第Ⅸ因子(Ⅸa)などと結合して、これらの働きを停止させます。そのため凝固反応の最終段階であるトロンビンの量が減少して、フィブリノゲンがフィブリンに変換できなくなり、フィブリン膜が生成されなくなります。凝固作用と制御の仕組み

トロンボモジュリンとプロテインCによる凝固の制御系は、比較的近年発見されました。凝固反応が進む中で作られるトロンビンは、血管の内皮細胞から血管内に突き出た膜タンパク質トロンボモジュリンによって捕まります。トロンボモジュリンとトロンビンが結合した複合体は、次に血液中を流れているプロテインCというタンパク質と接触して、このタンパク質を活性化プロテインC(aPC)に変えます。活性化プロテインCは凝固反応で生じた活性化第Ⅷ因子(Ⅷa)と活性化第Ⅴ因子(Ⅴa)を分解します。凝固反応の中間段階の反応物質(ⅧaとⅤa)が減少していきますので、最終産物であるフィブリンが形成されず、フィブリン血栓形成に終止符が打たれます。

なお、血栓の出来すぎを防ぐための治療薬としては、血漿由来のアンチトロンビンⅢ製剤が最も早く開発され(1987年)、その後活性化プロテインC(2000年)、トロンボモジュリン(2008年)、アンチトロンビンガンマ(遺伝子組換え)(2015年)が開発され、最も新しく開発された製剤がプロテインC(2024年)です(「血漿分画製剤のあゆみ」参照)。

<新潟県立加茂病院名誉院長 高橋 芳右先生(2024年5月監修)>

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