血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

アンチトロンビン製剤

アンチトロンビンと血栓症

ケガをした時には5分以内に血が固まり(一次止血、二次止血)、傷口を血栓でふさぎます。これは、生体を維持するのに重要な仕組みで、「良い血栓」といえます。しかし、いろいろな原因で必要でないところの健全な血管に血栓ができると、その先に血液が届かなくなります。詰まった先の細胞や組織に酸素や栄養が来なくなるため、これらの細胞や組織は死んでしまいます。これは医学用語で壊死(えし)と呼ばれています。細胞や組織の壊死が進むと、臓器の働きが失われ死につながります。例えば、脳や心臓の血管が血栓で詰まると脳梗塞や心筋梗塞を生じ、突然死の原因となります。病気に関係した血栓は、いわば「悪い血栓」といえます。

「悪い血栓」ができる大きな原因として、血液、血管、血流の変化が挙げられます。例えば、ロングフライト症候群は飛行機の中で長時間同じ姿勢で座っていることで、体の特に足の血液の流れが滞り、深部の静脈に血栓ができます。これはアンチトロンビンが不足して起こる下肢の深部静脈血栓症と臨床上ほとんど同じものです。

【ロングフライト症候群】

血液成分の一つ、アンチトロンビンが遺伝的に正常な量で作られなかったり、正常な機能を持ったタンパク質ができなかったりすると、凝固反応を抑えられずに、凝固が進み血栓症を生じます。アンチトロンビンによる血栓は静脈血管内で生じます。血小板による血栓が流れの速い動脈で起こりやすいのとは対照的に、凝固制御に関連するタンパク質アンチトロンビンやプロテインCの欠乏した家系では、多くは何かのきっかけで静脈に血栓症を発生します。

アンチトロンビンが低下するもう一つの病態に、播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation、略してDIC)と呼ばれる重篤な病気があります。この病気は、がんや白血病、感染症などにかかった患者さんに生じます。がんや白血病の細胞に凝固反応を開始させる組織因子が現れて、血栓が身体のあちらこちらの血管にできてDICが始まります。広範囲に小さな血栓が多くできるため、臓器の働きが悪くなります。そして、血小板や凝固因子が不足してくるとともに、血栓を溶かす線溶が活発になり、同時に出血しやすくなります。DICは大変治療の難しい病気です。DICの進行により、血液凝固制御因子のアンチトロンビンも消費されて減少してきます。このため、凝固の過度な進行を抑えるため、アンチトロンビンⅢ製剤がDICの患者さんにも標準的な治療として使われます。

<新潟県立加茂病院 名誉院長 高橋 芳右先生 監修>

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