血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

アンチトロンビン製剤

アンチトロンビンの生体内での働き

アンチトロンビンの発見のきっかけとなったのは、1950年頃の実験に基づいています。トロンビンは、既に1900年前後からその存在が知られていましたが、このトロンビンを血漿に加えたところ、徐々にトロンビンの働きが失われました。このように、血漿の中にはトロンビンと結合して、トロンビンを不活化する物質があることが分かり、トロンビンに抵抗する物質という意味からアンチトロンビンと名付けられました。

一方、1960年代の中頃にノルウェーで、静脈血栓症が多数例で発生している家系が見つかりました。この家系を詳しく調べたところ、血栓症を発症した家族はアンチトロンビンが正常な人の半分(50%)位しかありませんでした。このようなことにより、アンチトロンビンが遺伝的に正常に作れないことで、そうした家系には血栓症が生じることが分かりました。

その後の研究で次のような事実も判明しました。試験管内では、アンチトロンビンだけで凝固反応を止めようとしても速度が遅く効果が弱いのです。ところが、この反応系にヘパリンを加えると、アンチトロンビンの凝固を抑える速度が、数千倍も高まることが分かりました。これは、図で見るように、ヘパリンがアンチトロンビンに結合するとアンチトロンビンの形態が変わり、トロンビンとピッタリ結合できるようになるためと分かりました。生体内では血管内皮細胞上にあるヘパラン硫酸というヘパリン様物質がヘパリンに代わる働きをしています。

【ヘパリンがあると反応が速くなる】

〈柴田進 著「図解血液病学(改定3版)」p457.1996.金芳堂から許可を得て転載〉

アンチトロンビンとヘパリンは、このように協力して凝固の抑制の働きをしますので、医療においてヘパリンは血栓症の治療の標準薬として使用されています。

<新潟県立加茂病院名誉院長 高橋 芳右先生(2009年11月監修)>

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