血漿分画製剤のいろいろ

血液製剤・血漿分画製剤・血液製剤が必要となる病気の種類などを学ぶことができます。

血漿分画製剤のいろいろ

血友病製剤

血友病関連凝固因子製剤の種類と特徴

2)第Ⅸ因子製剤

第Ⅸ因子製剤には、血漿由来の(1)第Ⅸ因子複合体製剤と(2)モノクローナル抗体精製高純度第Ⅸ因子製剤、また遺伝子組換えによって製造された(3)遺伝子組換え第Ⅸ因子製剤及び(4)遺伝子組換え型半減期延長第Ⅸ因子製剤があります。

いずれの製剤も、血友病B患者さんの止血管理に有効ですが、(1)は血友病Bの患者さんにとって不要である第Ⅱ因子、第Ⅶ因子、第Ⅹ因子を含んでいるため、現在では血友病Bの患者さんの治療薬としては(2)、(3)や(4)が主に使用されます。

(1)血漿由来第Ⅸ因子複合体製剤

クリオの上澄みを原料として物理化学的な精製法で作られます。この製剤は、血友病Bの患者さんの治療に有効な第Ⅸ因子を含む以外に、その他の第Ⅱ因子(別名:プロトロンビン)、第Ⅶ因子(別名:プロコンバーチン)、第Ⅹ因子(別名:スチュワート因子)を含んでいます。そのため、第Ⅸ因子複合体製剤は、これらの頭文字をとって、PPSB製剤とも呼ばれることがあります。PPSB中のBは、血友病Bに由来しています。

(2)血漿由来高純度第Ⅸ因子製剤

第Ⅸ因子複合体製剤に含まれる第Ⅱ因子、第Ⅶ因子、第Ⅸ因子、第Ⅹ因子は、性質がよく似た酵素タンパク質で、それぞれを物理化学的に分離することが大変困難だったために、初期には4つの因子が一緒になった第Ⅸ因子複合体製剤が作られました。高純度第Ⅸ因子製剤は、第Ⅸ因子だけに結合する第Ⅸ因子に対するモノクローナル抗体を製造工程で用い、血漿から第Ⅸ因子を高純度で取り出し、製剤化したものです。

血漿由来高純度第Ⅸ因子製剤の基本的な製法
(3)遺伝子組換え型第Ⅸ因子製剤

遺伝子組換え型第Ⅸ因子製剤は、ヒト第Ⅸ因子の遺伝子を組み込んだ細胞を培養し、第Ⅸ因子(タンパク質)を産生させたのち、アフィニティークロマトグラフィー法やイオン交換クロマトグラフィー法などで純化精製して製剤化しています。第Ⅸ因子を発現させる細胞として、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を使用した2つの製品が供給されています。

血漿由来高純度第Ⅸ因子製剤の基本的な製法
(4)遺伝子組換え型半減期延長第Ⅸ因子製剤

遺伝子組換え型半減期延長第Ⅸ因子製剤は、人免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域に血液凝固第Ⅸ因子を融合させた糖タンパク質であり、ヒト胎児腎細胞由来(HEK)細胞により産生させたのち、アフィニティークロマトグラフィー法やイオン交換クロマトグラフィー法などで純化精製して製剤化しています。平均消失半減期は、他の遺伝子組換え型第Ⅸ因子製剤と比較して約2.4倍です。

遺伝子組換え型半減期延長第Ⅸ因子製剤

<聖マリアンナ医科大学小児科学特任教授 瀧 正志先生(2016年6月監修)>

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